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第12話 動かない心②

last update Dernière mise à jour: 2025-06-26 18:31:10

 その一部始終を見ていた梨華が、ショックで泣き出してしまう。

 すぐに梨華の父の怒りが爆発した。

「黒崎さん、これはどういうことですか!

 このような態度は、梨華を侮辱したも同然! これがどういうことかわかっているのか!」

 娘を侮辱された父親の怒りほど恐ろしいものはない。

 智彦はどうにか相手の怒りを鎮めるように、努力することしかできなかった。

「申し訳ありません、どうか穏便に。

 聖にはよく言って聞かせますので。どうか今回はお許しを」

 智彦は頭を下げ、謝り続ける。

 しかし、梨華の父の怒りが収まることはなかった。

 その夜、聖は智彦に呼び出された。

「――おまえ、どういうつもりだ?

 梨華さんは泣き出すし、御父上はお怒りで。もうこちらの話を聞いてくれない。

 北条家との関係が悪くなったらどうしてくれるんだ! 北条家と繋がりを持てるなんて幸運なことなんだぞ!

 梨華さんだってあんなに美しくて優しそうな方じゃないか。何が不満なんだっ」

 智彦がいくら言い聞かせても、聖は聞く耳をもたない。

 もう心は決まっている、というように。

「さくらか……。あの娘がおまえを惑わすのだな」

 智彦が少しの間、黙って何かを思案しているようだった。

 そして、決定的な言葉が放たれた。

「ならば仕方ない。さくらはこの屋敷から出ていってもらおう」

 今まで黙っていた聖が急に叫んだ。

「父上! そんなこと、私が許さない!

 そんなことをしたら、私はこの家と縁を切ります」

 聖は冗談ではなく本気で言っているのだと、智彦にもすぐにわかった。

 しかし――

 眉を寄せ、大きな息を吐いた智彦は聖を見つめる。

「わからん、そこまでしてあの女と一緒になりたいのか?

 父を裏切っても? この家を捨ててでも?」

 智彦の問いに、しっかりと頷き返す聖。

 その瞳には、何に
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Commentaires (1)
goodnovel comment avatar
憮然野郎
え、あっさり許すなんて怪しいですね?聖の父智彦には何か魂胆がありそうですね...
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